セルフデザインの考え方
セルフデザインは「自分の生き方を仕事にする」ためのプログラムです。「生き方を仕事にする」と聞くと、大げさに感じる方がいるかもしれませんが、“ひとりビジネス”というスタイルにおいては、むしろ自然な状態だと思っています。
この中で大切にしている考え方は、ビジネスの中で「自分らしさをそのまま表現する」こと。“仕事用の自分”をつくるんじゃなく、自分の言いたいことやりたいことを、そのまま仕事として形にするということです。これは僕自身の経験から、たどり着いた結論でもあります。
生きづらさの根源
そもそも僕がこんな風に考えるようになったのは、僕自身の「生きづらさ」の経験に由来します。今から21年前、僕はグラフィックデザイナーとして独立し、その後は経営者としてスタッフを抱えながら会社運営をしてきました。経営者としてのキャリアに誇りを感じつつも、どこかで無理をしている自分がいました。
「経営者らしくしなければ」と自分にプレッシャーをかけ、世間で言うところの成功を目指して、いつの間にか周囲に対しても厳しく接するようになっていました。その頃は何でも自分で背負い込んでいたように思います。「周りにどう見られるか」ということばかり気にしていた僕は、いつしか「自分らしさ」を見失っていました。これが、僕にとっての生きづらさの根源です。
体調不良とスタッフの大量離脱
十数年前のことです。心身の負担が大きくなり、体調を崩すことが増えました。原因不明の不調で、頻繁に病院に通う日々。それでも会社の業績は順調で、表面的にはうまくいってるように見えましたが「生きている実感」のようなものは薄れていきました。そしてその頃、突然スタッフが大量に離れていくという出来事が起こりました。
この出来事をきっかけに、何かがプツっと切れたように感じました。吹っ切れた、というのでしょうか。それまで無理に背伸びをしようとしてた感覚を手放し、自分自身と向き合ってみることにしました。「本当はどうしたいのか?」と改めて自問自答し、徹底的に自分と向き合う時間を持つようになりました。
自分にとっての正解を見つける
それから少しずつ、自分らしい生き方を模索するようになりました。最初は知識を増やそうと、さまざまなことを学びました。しかし、どれだけ知識を身に付けても、どこか満たされない感覚が残っていました。あるとき気づいたのは、他人から学ぶよりも「自分の中にある答え」を見つけ出すことが大切だということ。
自分にとっての正解は、自分の中にしかない。自分を信じる感覚を身につけたとき、それまでがウソのように周囲との関係も、仕事もスムーズに回り出しました。スタッフに頼ることができるようになり、経営に追われるストレスが少しずつ軽減していきました。そして何よりも、仕事が再び楽しいと感じられるようになりました。
生き方に焦点を当てたデザイン
この変化から、僕が手掛けるデザインの考え方にも変化が生まれました。デザイン制作の依頼をいただいたクライアントに対しても、彼らが「自分らしくあること」を大切にし、その人の「生き方」を表現するデザインに重きを置くようになりました。
それぞれのクライアントにはそれぞれの価値観があり、生き方があります。それを反映したデザインを作ることが、僕にとって大きな喜びになりました。そうしたプロセスを経て、僕の中で「生き方を仕事にする」という考えがはっきりしていきました。
自己表現としての「セルフデザイン」
「セルフデザイン」は、自分自身をありのままに表現するための場です。と言いつつ、僕はデザイナーとして他人の自己表現はサポートできても、自分自身を表現することにはずっと苦手意識がありました。しかし、クライアントが生き生きと自己表現を楽しむ姿を目の当たりにするたび、次第に「本当の自分を表現してみたい」という気持ちが芽生えてきました。
セルフデザインは、僕がこれまでやってきた「デザイン制作」とは一見違うもののように思えるかもしれません。でも、僕にとってはこれもまた「デザイン」であり、自己表現のひとつ。セルフデザインを通じて、生き方や価値観を形にするプロセスは、それぞれにとっての「自分をデザインする」ことだと思っています。